「日本で最も美しい村」フォトコンテスト2016 へたくさんのご応募を誠にありがとうございました。
写真家の吉村和敏氏を審査員にお招きして行われた厳正な審査の結果、グランプリ・特選・入選受賞作品13点が決定いたしました。日本の美しい村の情景、生活の営みと景観、そして文化を切り取った珠玉の作品をここに発表いたします。
また、「日本で最も美しい村」賞(55作品)につきましても、「日本で最も美しい村」連合の公式Facebookページや同連合加盟の町村地域のホームページ等に掲載させていただく予定ですので、こちらもどうぞお楽しみになさってください。
下呂市馬瀬(岐阜県)
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
今回のフォトコンテストの趣旨である「日本の生活の営み、景観と文化」が見事に表現された作品です。色鮮やかな花火が山里全体を明るく照らし出し、夜でも村の雰囲気がよく伝わってきます。また、この花火を鑑賞する村人たちの姿も点景で映し出されており、花火の眩しさや轟音に歓喜する大人や子供たちの声が聞こえてくるようです。この村で大切に受け継がれてきた夏祭りの様子を見事に描き出した優れたドキュメンタリー作品ともいえるでしょう。撮影技術も優れています。何より構図が素晴らしい。花火を正面に配置し、眼下に広い空間が生み出すことによって、構図に安定感をもたらせています。花火は動きのある難しい被写体ですが、的確な露出とシャッタースピードによって、色や形の美しさを切り取ることに成功しました。
和束町(京都府)
― 受賞の言葉 ―
この度は特選を頂き誠にありがとうございます。写真は故郷の和束町で撮影したものです。
人々の営みと共に長い年月を経て、その村や町特有の景観が生まれます。
一つの家族の始まりである婚礼は、ある意味その美しい村の景観を作る歴史の始まりかも知れません。
きらきらと光る一面の茶畑が、まるで花嫁を祝福しているかのようでした。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
延々と茶畑が連なる光景は、日本が世界に誇る絶景です。そこに、日本的なスタイルで行われている結婚式の様子が点景で映し出されています。一枚の作品の中には、この地しかない風景の美しさと、伝統文化が凝縮されているような気がしました。新郎と新婦、親族の位置関係もよく、撮影者はファインダーを覗きながらシャッターチャンスを狙っていたことがわかります。また、望遠レンズの圧縮効果によって、奥行き感のある茶畑を一枚の絵画のように見せるテクニックも卓越しています。空と地に無限の広がりを感じさせる縦位置の構図も正解でした。
原村(長野県)
― 受賞の言葉 ―
作品の撮影場所:長野県原村の田園地帯
撮影したきっかけ:地元の田園地帯の美しい夕景を撮ろうと素敵なポイントを探っていました。
「日本で最も美しい村」の情景を感じたポイント:
夕焼けが美しい棚田の中で、田植え後の稲の手入れをする農婦の姿が目に入り、正に日本の農村らしい勤勉に働く光景に感動を覚え、写真に残したいと強く思いました。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
この作品を目にしたとき、まずは色彩の鮮やかさに心が奪われました。風景を3分割してとらえた構図も見事です。夕陽が輝く夕空ではなく、田圃の水に映り込む光景をメインにしたことにより、日本の美しく豊かな田園風景をストレートに伝えることができました。また、この作品の価値を高めているのは、田圃の中で苗を植える人です。手を伸ばし、足を広げた瞬間を狙い、シャッターを切ったのでしょう。背景に一台の軽トラックをポツンと入れたことも素晴らしい。あらゆる面で計算され、生み出されたベストショットだと思いました。
黒松内町(北海道)
― 受賞の言葉 ―
この度は、私の作品を特選に選んでいただき大変光栄であるとともに、
審査にあたっていただいた吉村先生、ありがとうございました。
黒松内町は、自然豊かな小規模農家が点在する山間地です。
受賞の作品は、ぽつんと一軒ある農家で、古い建物や土そして、それを囲む木々の緑、そういう中に鮮やかに色づく桜、このコントラストの美しさに春の息吹を感じ、これが本来の原風景と感じ、シャッターを切りました。
我が町にも多くの原風景が残されておりますので、将来に残したい風景を撮り続けてゆきたいと思います。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
北国に舞い降りた春を伝える爽やかな作品です。満開の桜の木と手を結ぶように、民家、サイロ、納屋、ビニールハウスがバランスよく建ち並んでいます。この山里の生活風景をとらえた作品には、撮影者の心の優しさがとけ込んでいるような気がしました。煙突から白い煙が立ち上っているので、暮らしている人の気配も感じます。仮に、畑で作業をしている人が映り込んでいれば、間違いなくグランプリを狙えたでしょう。
皆様から送られてきた作品を目にしたとき、まずはレベルの高さに驚きました。すぐには審査に入ることできず、思わず時間を忘れ、個々の作品に見入ってしまったほどです。この中からどのようにして受賞作を選んでいけばいいのか随分と悩みましたが、やはりフォトコンテストの趣旨である「日本の生活の営み、景観と文化」を強く意識し、選考していくことに決めました。動物や植物をとらえた優れたネイチャーフォトも数多く集まりましたが、「村」の魅力を伝えるには少々物足りなさを感じたのも事実です。
そしてもう一つ大切にしたことは、撮影者の土地に対する想いの強さです。地元の人も、そうでない人も、被写体への「愛」は不思議と作品に反映されていくものです。じっくりと時間を掛けて作品を見つめ、一枚に込められた作者の心の内をすくい取る努力をしました。
ここに各町村賞を含め約60点あまりの作品が選ばれたわけですが、一枚一枚を見て改めて感じることは、日本の景観の美しさと多様性です。雪降る北の大地、深緑に覆われた山里、南国の輝く碧い海、そして各地で大切に受け継がれてきた祭りや行事、工芸などの伝統文化……。これほどまでに様々な要素が詰まった国は他に例がなく、今回集まった作品を通して、この国の地方の魅力をもっともっと世界中の人々にアピールしていきたい衝動に駆られました。
「日本で最も美しい村」フォトコンテストは、日本の素晴らしさを描き出す極めて質の高い写真選考会であると断言できます。これからも継続してカメラを向けてください。来年も皆様からの力作をお待ちしております。
写真家・吉村和敏
― 受賞の言葉 ―
馬瀬川では夏の終わりを告げる花火大会が八月下旬に開催される。
山間の清流、日本一の鮎、豊かな自然と農作物に恵まれた美しい村「馬瀬」。
村で育った若者達もこの日ばかりはと故郷に帰り友と昔を語り合う。
小高い丘の中学校の校庭に沿った坂道から打上場所の川原を見下ろした。
いよいよ日本で最も美しい村での打上げ花火が始まる。
単身赴任の十年前、この校庭からみた豪快な尺玉の記憶が蘇える。