「日本で最も美しい村」フォトコンテスト2017へたくさんのご応募を誠にありがとうございました。
写真家の吉村和敏氏を審査員にお招きして行われた厳正な審査の結果、グランプリ・特選・佳作・入選受賞作品19点が決定いたしました。日本の美しい村の情景、生活の営みと景観、そして文化を切り取った珠玉の作品をここに発表いたします。
また、「日本で最も美しい村」賞につきましても、「日本で最も美しい村」連合の公式Facebookページや同連合加盟の町村地域のホームページ等に掲載させていただく予定ですので、こちらもどうぞお楽しみになさってください。
伊根町(京都府)
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
伊根浦舟屋群には、多くの方がカメラを向けていました。ストレートに村の全景をとらえた作品が大部分を占めましたが、中には舟屋と花火、釣り人、カモメなどを組み合わせたユニークな作品もありました。その中で最も目を引いたのが、この夜光虫の作品です。神秘的な淡い光を巧みに描写し、村人が生活する場所と組み合わせることで、ストーリー性のある絵画のような作品に仕上げています。広角レンズで主題を強調させる構図が素晴らしく、夜景撮影の技術力の高さも目を引きました。この作品を目にする誰もが、「村を訪れ、この光景を見てみたい」と切望することでしょう。素朴な村で生み出された「奇跡の一枚」と言えます。
和束町(京都府)
― 受賞の言葉 ―
この度は特選を受賞させていただき、誠にありがとうございます。この写真は真夏の夕暮れどき、太陽が傾いた和束町で撮影しました。和束町はまさしく茶畑とともにある町で、丸ごと茶畑に覆われた山など、様々なこの地特有の景色があります。それらの景色の中でも、私にとってはこの見渡す限りの茶畑と不規則に立ち並ぶ防霜用の送風機が西日に照らされる光景が、伝統と郷愁を感じる大変美しい姿に思えました。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
茶畑の景観は、自然とそこで暮らす人々が生み出した絶景です。一見するとありふれた風景作品ですが、この一枚にはいくつもの撮影テクニックが散りばめられています。夕陽が西の空に傾く「色彩が最も豊かなになる時」を狙ってシャッターを切っています。茶畑が影になった部分をあえて画面の中央に配置し、この場の遠近感や立体感を強調させる手法もさすがです。風景には、人や車など何かワンポイントがあるとさらに力強さが増します。しかしこの作品は、それらを必要としないくらいの説得力があるのです。きっと世界中の人々が、この地を訪れてみたいと願うことでしょう。村の最も優美な姿を切り取った見事な作品です。
東峰村(福岡県)
― 受賞の言葉 ―
豪雨災害で甚大な被害があった東峰村、その小石原地区で行われている千灯明での小石原神楽のワンシーンです 舞う姿を動的に捉えました。災害で今年は中止になりましたが、この作品で被災者に祭りの雰囲気だけでも伝わると嬉しいです。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
祭りをテーマにした作品は数百点の応募がありましたが、多くが祭りそのものを写しただけの説明写真でした。その中でキラリと光っていたのがこの作品です。神楽堂で舞う1人の男性にターゲットを絞り、見事な構図とライティングで祈りの世界を切り取っています。凛とした空気感、男性の心の内までも伝えようとする表現力。もちろんこの一枚からは、場所や祭礼の詳細はわかりません。しかし優れた作品というのは、本来それでいいのです。目にする誰もが一瞬で作品世界に引き込まれてしまう。それからこの地の神楽に興味を覚えはじめる……。写真の神髄を教えてくれる極めて上質な作品で、日本文化の素晴らしさも伝えています。
海士町(島根県)
― 受賞の言葉 ―
この度は特選をいただきましてありがとうございます。この写真は、私の故郷である島根県隠岐郡海士町で毎年開催される「思い出写真撮影会」で撮影したものです。この島のキャッチコピーは「ないものはない」。まさにその通りで、大事なものが全てここにあると思います。人々のつながり、優しさ、暮らし方。大切なことを大切にしている素敵な土地。そんな島だからこそ撮れた一枚です。海士町大好き!!
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
黄金色の田園に一列に並ぶ村人たちをとらえたユニークな作品です。一人一人の生き生きとした表情が素晴らしく、この村で暮らす喜びのようなものが伝わってきます。背後に、青く輝く海と緑に抱かれた集落を配置し、この地の恵まれた環境と自然美をさり気なく物語っている点も素晴らしいと思いました。通常どのフォトコンテストでも、このような演出された作品は敬遠されがちです。そこをあえて選んだ理由は、他のどの作品よりも、見る側の心を動かす不思議な力を持っていたからです。ストレスと闘いながら生きる都会人が見たら、「きっと素敵な村なんだな」「こんな村で暮らしてみたいな」と感じることでしょう。「最も美しい村」を、思いもよらなかった方法で表現した傑作です。
今年も上質な作品が数多く寄せられ、一次予選から審査にかなりの時間が掛かりました。神社仏閣、祭り、鉄道、料理など様々なジャンルの作品がありましたが、やはり最も多かったのは風景でした。しかし昨年と比べ、風景のとらえ方が若干変わってきたような気がしています。村の定番風景ではなく、独自の視点で切り取った村の姿がたくさんありました。村内を流れる川にしても、村人しか知らないような山道から俯瞰で狙ったり、星空と組み合わせたり、家屋の映り込みをアップにしたりと、撮影者の「チャレンジ精神」が現れていたのです。そのため選考をしているとき、「日本にもこんな風景があったのか!」という新鮮な驚きと同時に、まるで異国を旅しているような気分にもなりました。
村人たちをテーマにした作品が少なかったことが残念でした。「最も美しい村」とは、自然や風景の美しさだけを伝えようとしているのではありません。村で暮らしている一人一人が輝いてこそ、「美しい」と言えるのです。過疎化が進む村で土地を愛し上質な野菜を生み出しているお爺さん、都会から限界集落に移住し子育てをはじめた若い夫婦、ニッポンの田舎に惹かれ作品制作を行う外国人アーティスト……。そんな人たちにカメラを向けたドキュメンタリー作品をもっと見てみたかったです。
今、世界中の人々が日本の「村」に熱い視線を注いでおり、このフォトコンテストの入賞作品を紹介するホームページにも、海外からたくさんのアクセスがあります。これからも日本各地を旅し、独自の視点で村の姿を切り取ってみてください。世界に向けて発信できる個性溢れる作品を期待しています。
写真家・吉村和敏
― 受賞の言葉 ―
この度はグランプリを頂き誠にありがとうございます。写真は京都府北部の伊根町で撮影したものです。伊根町は伝統的な舟屋が多く残る町であり、漁業と観光業の二本柱の町です。撮影した夜光虫は昼は赤潮と呼ばれ漁業に影響があり、嫌われるものですが伊根町では観光資源として夜光虫ツアーを開催するなどして話題になっております。趣のある舟屋の景観と漁船、そして青く輝く夜光虫と伊根町の文化・生活が垣間見えるような景色でした。