「日本で最も美しい村」フォトコンテスト2018へたくさんのご応募を誠にありがとうございました。
写真家の吉村和敏氏を審査員にお招きして行われた厳正な審査の結果、グランプリ・特選・佳作・入選受賞作品20点が決定いたしました。日本の美しい村の情景、生活の営みと景観、そして文化を切り取った珠玉の作品をここに発表いたします。
また、「日本で最も美しい村」賞につきましても、「日本で最も美しい村」連合の公式Facebookページや同連合加盟の町村地域のホームページ等に掲載させていただく予定ですので、こちらもどうぞお楽しみになさってください。
松崎町(静岡県)
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
松崎町秋まつりをテーマにした作品です。一見すると祭りの状況を伝えるスナップ写真ですが、この一枚には幾つもの優れた要素が潜んでいます。まず評価したいのが、作品にするのが難しいとされる祭囃子を上手くとらえている点です。見た瞬間、心地よい音色が聞こえてくるようでした。立派な山車に乗って笛を吹き太鼓を叩いているすべての人たちの表情が生き生きと輝いているのも素晴らしい。祭りを見物する地元の人や観光客を入れなかったことで、村に伝わる伝統文化を大切に守り抜く村人たちの絆がより明確になりました。撮影技術もたいへん優れています。これ以上トリミングのしようのないくらいの大胆な構図で、祭りの臨場感を伝えています。露出は的確で、ブレはなく、気持ちのいいくらいピントが合っている。日本に興味を抱く外国人の心も奪う、力強い作品に仕上がっていると思いました。
南木曽町(長野県)
― 受賞の言葉 ―
この度は特選に選んでいただき誠にありがとうございます。写真は長野県南木曽町の桃介夏祭りで河川公園から打ち上げられる小さな花火大会です。桃介橋は大正時代に電力王福澤桃介によって造られた木造の吊り橋です。昭和の後期には老朽化が進み廃橋寸前にまでなりましたが、平成5年に復元され近隣住民を始め多く人々に親しまれ、美しく雄大な景観を誇っています。当日は小雨が降ったり止んだりでしたが桃介橋を見下ろせる場所から撮ることができました。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
南木曽町で開催される桃介花火大会。煌びやかな花火だけでなく、村の全景や歴史ある桃介橋を画面の中に配置したことにより、完璧な構図で描かれた絵画を彷彿とさせる作品に仕上がりました。おそらくこの一枚を生み出すために、かなり時間を掛けて撮影ポイントを探したのではないでしょうか。俯瞰でとらえたことも成功しています。ドーンドーンと響き渡る花火の音よりも、木曽川の流れ、村人たちの歓喜、そして雨音の方が強調されました。今、日本各地で花火大会が開催されています。テレビで中継されるような大規模な花火大会よりも、不思議とこのような山里の花火大会の方が、都会人の心に響くものがある。かつて子供の頃に見た光景が蘇ってくるのかもしれません。日本の情緒を見事に表現した心温まる作品です。
美瑛町(北海道)
― 受賞の言葉 ―
この度は特選を受賞させて頂きありがとうございます。この写真は美瑛町の展望花畑、四季彩の丘で撮りました。美瑛町は美しい丘の景観が有名で、この四季彩の丘もパッチワーク柄のきれいなお花畑を見ることができ、国内外から沢山の人が観光に訪れる有名な観光スポットです。きれいなお花畑もそれを植えて管理する人たちがいるからこそ見れる景観。人の営みがあるからこそ見れるということを知ってほしいと思い、この作品を仕上げました。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
美瑛町の四季彩の丘には数多くの人がカメラを向けており、今年もたくさんの応募がありました。その中で最も目を引いたのがこの作品です。地元の人たちが花の苗の植え付け作業を行っている。背後には見頃を迎えた美しいモザイク模様の花畑が広がり、いわゆる「完璧な」景観があります。二つの世界を同時にとらえることにより、この場所の季節と時間の流れをストレートに物語っています。優れたドキュメンタリー作品とも言えるでしょう。許可を取って撮影者が畑の中に入り、もっと働く人々の表情がわかるような撮り方をしていれば、グランプリを狙えたかもしれません。村が誇る美しい景観は、村人たちがゆっくりと時間を掛けて生み出していくものである。そのことを改めて思い知らされました。
小坂町(秋田県)
― 受賞の言葉 ―
秋田県小坂町では毎年12月にクリスマスマーケットが開かれます。明治初めにドイツ人鉱山技師がこの町に赴任した際、故郷ドイツを懐かしみ、地元の人々を招いてクリスマスクルトを行ったことに由来します。異国情緒あふれる街並みの中、特にこの小坂鉱山事務所のライトアップは感動的です。大規模な催しではないものの、小さくも優しく温かみのある人々の想いの形が表れているこの写真が、本コンテストの趣旨に合うかと思い応募させていただきました。
― 審査員 吉村和敏氏による講評 ―
小坂町には、明治時代に建てられた歴史的価値のある洋館がいくつか残されています。この作品は、第一次予選から気になっていました。なぜなら、夏の日中にとらえた作品が多い中、雪降るクリスマスの時期に、それも夜という時間帯にカメラを向けていたからです。ライトアップに心打たれている人たちを配置することにより、洋館と地元の人たちの結びつきを伝えています。縦位置の構図にし、上下にシルエットの部分を多く取り入れたことで、まるで映画館で映画を観ているような気分にさせてくれます。ロマンチックな物語を想像することができました。洋館が大切に受け継がれ、クリスマスの時期がこんなにも素敵だとしたら、多くの人がいつか小坂町を訪れてみたいと夢を抱くことでしょう。
「日本で最も美しい村」フォトコンテストは、すべての応募作品をA4サイズでプリントアウトして審査が行われます。最初、テーブルの上に並べられた数千点に及ぶ作品を目にした時、日本の色彩の豊かさに驚くと同時に、皆さんが村に抱く「愛」のようなものを感じ取ることができました。
第一予選では、撮影技術以上に、「日本の生活の営み、景観と文化」がいかに伝えられているかを重視し、選考を行っていきました。今年も、伊根町の舟屋、和束町の茶畑、美瑛町の青い池など、「最も美しい村」を代表する景観をとらえた作品が数多く集まりました。しかし、すでに多くの人が知る風景では、さすがにフォトコンテストで賞を狙うのは難しいです。たとえば、何気ない路地裏の光景を切り取ったOtsukaさんの作品「伊根の隙間から」に心が奪われたのは、今までとは違った視点で村の魅力に迫っていたからです。この一枚には、潮騒、静寂、暮らしの気配など、たくさんの物語が閉じ込められているような感じがしました。
昨年、特選を受賞して大きな反響を呼んだ崎野さんの「ないものはない」。今年もいくつかの村から、似たような手法でとらえた作品が寄せられました。入選の佐藤さんの「家族総出で田植えじゃ」は、村人たちを横一列に並べるという昨年にも見られたスタイルでしたが、このように、撮影者と地元の人が力を合わせて作り上げていく「演出作品」は、もっとあってもいいような気がしています。写真をきっかけに人々の結びつきが密になり、作品を見る側に、村で生きる素晴らしさを教えてくれるからです。
「最も美しい村」の写真を撮ることが目的で、日本各地を旅している人が増えてきたことも喜びの一つでした。しかし多くの人は、村の景観にしか興味を示さないようです。村の中には、農作業をするお年寄りもいれば、野外で元気よく遊ぶ子供たちもいる。ローカルなレストランやショップ、旅館や民宿だってあります。もっと多方面から村の素顔に迫ってみると、生み出される作品がさらに深みを増してくるでしょう。村のテーマは無限大です。思いも寄らぬ手法で切り取った珠玉の一枚を期待しています。
写真家・吉村和敏
― 受賞の言葉 ―
この度はグランプリに選んで頂きありがとうございました。
この画像は毎年11月3日に行われる松崎町恒例行事「秋まつり」での終盤の見せ所、三社叩き合いによるボルテージが最高潮の瞬間です。
松崎町は静岡県で最初に最も美しい村に認定され、その中でもこの秋まつりでは町内各社若衆の奏でる祭囃子に魅了された観衆との一体感やそのノリに応えるパフォーマンスで会場は熱狂のるつぼに包まれ、県内で一番小さい町の全国に誇れるひと時です。